Life Report<本当の辛さ>
僕は明日、最後の出社をします *** 去年の10月、会社を辞めて沖縄へ引っ越すことを決めた時は、この日までの道のりがすごく遠いものに思えた。早く仕事やら、その他いろいろなことにけりをつけて新しい生活を始めてしまいたい、と切に憧れていた。ところが今は逆に、今日の一日が惜しいとさえ思う。カレンダーの3月と4月との間にあと3ヶ月くらいあればいいのに。いっそ4月なんてこなければいいのにと。そんな具合に、にわかに沸き上がった弱い気持ちが日一日と大きくなり、僕の心を染み浸していた。 前にも書いたとおりですが 沖縄へ行くことを決めてからというもの、僕達の前には超えなくてはならない壁がいくつもいくつも現れた。だけど今になって思うと、僕達は多少躓きもしたが、まあ順調にここまでこれたんじゃないだろうか。ほとんどの問題は解決に向かっている。新しい生活を始めるための家も見つかった。会社には無事に辞表を提出し、上司も今となっては笑顔で「遊びに行くよ」なんて言ってくれる。万事順調だ。なのになんだろう、こんなに心がぼろぼろになっているのは。 本当の辛さの始まり 3月末の休日、僕と妻はいつもより少しだけ早起きをして、その日一日の計画をメモ帳に書き出した。市役所へ行くこと、銀行へ行くこと、郵便局とホームセンターへ行くこと、それから引っ越し社と車の運送業者へ電話をすること。ここから離れるための準備が始まっていた。 前の日の晩は、僕と妻の友達が集り、盛大に送別会を開いてくれた。僕は彼らの一人ひとりに、自分の中にある「その人の印象」をより深く刻み付けようと、頭の中で何度も噛み締めながら話をした。「そうだったよな、今は本社にいるんだよな」「結婚したんだよね、おめでとう」。みんなは僕の気持ちを見透かしているかのように、明るく「遊びに行くからさ」と言ってくれた。ちゃんとおぼえてるからな、絶対に遊びに来いよ。僕は、今にも泣き出しそうなのだ。 3月に入ってからというもの、時間が許す限り、僕はひたすら友達と酒を飲んでいる。そりゃあこれだけ毎日のように飲んでいたら、身体だって黙っちゃいない。胃だか腸だか分からないけど、どこからともなく腹が痛くなり、肌が荒れて、両耳が中耳炎になった。だけど僕は無駄な時間を過ごさないように、みっしりとスケジュールに酒の席の予定を投じた。 大好きな友達と会う度に、そしてその日の席を終えて別れる度に、僕は心がぼろっとくずれそうになる感覚を味わった。ならば飲みになんて行かなければいいのに、と思うかもしれない。しかしそうもいかないのだ、なんといっても僕はこいつらと一緒にいることが好きなのだから。 大好きな友達と離れるために毎日そいつらと楽しく酒を飲む。本当の辛さはここにあった 引っ越しは4月7日。この一週間は僕にとってとてつもなく長いものになるに違いない。
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![]() 船上にて 那覇〜石垣 |
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